SPECIAL

クリスマス ショートノベル

241244

 クリスマスイブのGFハウスは、ツリーやリースで明るく飾り立てられていた。暖かな遊戯室の中、子供達は誰もが待ちきれない様子ではしゃいでいる。
「サンタさん、今年は何持ってきてくれるかな?」
 10歳のエマは、サンタクロースが登場する絵本をフィルやコニーに読み聞かせながら、楽しそうに呟いた。
「僕、汽車がほしい!」
「えーとね、私はね……何でも嬉しいなぁ!」
 コニーはおっとりと笑う。
「エマは?」
 妹に尋ねられて、エマは拳を握って答えた。
「プレゼントなしでもいいから、今年こそ、サンタさんに会いたい!!」
 そのセリフに、そばにいたノーマンが、笑いながら声を漏らした。
「エマ、それ去年も言ってたよ」
「つか5歳の時から言ってる」
 本を読みながら、レイが淡々と付け足す。エマは「えぇっ、そうだっけ!?」と二人へ顔を向けた。
「あーあ、会えないかな。直接ありがとうって言いたいなぁ」
 サンタの絵本を見つめ、エマがもどかしげに口にする。
「僕もサンタさん、会いたい!」
「私も。サンタさんにも、プレゼントあげたいな」
 フィルとコニーの言葉に、エマは大きく頷くと勢いよく立ち上がった。
「よーし、じゃあハウスを出たら、みんなでサンタさんに会いに行こうー!」
 エマの宣言を聞いて、弟妹達は、わぁっと歓声を上げる。
「ハァッ? 直接会いにいくのかよ!!」
 突っ込んだレイに、エマは当然のように告げる。
「レイも行くんだよ」
「パス。絶対クソ寒い……」
「えぇ~! みんなで行こうよ!」
 二人のやりとりを聞いて、ノーマンが吹き出す。
「ははっ、エマらしいなぁ」
 ベッドで眠って、おとなしくサンタクロースを待っていたりなんてしない。実在するかも分からない遠いサンタの国へでも、エマなら本当にたどり着けてしまいそうだ。
「なぁ、雪降ってきたぞ!」
 遊戯室に勢いよく入ってきたドンが、窓を指さして告げた。
「えっ! ほんと!?」
 窓に駆け寄れば、くすんだ空の色に重なって、細かな雪がひらひら落ちていくのが見える。
「明日には積もるかな?」
「雪だるま作りたいね!」
 エマは一面に白く染まった庭を思い浮かべる。それは想像の中の、サンタの国によく似ていた。

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©白井カイウ・出水ぽすか・七緒/集英社

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