SPECIAL

レイ誕生日 ショートノベル

150144

 その日の昼食後、レイは読みかけの本が見当たらないことに気がついた。
「……?」
 自室も食堂も探したが見つからず、仕方なく新しい本を借りに図書室へ向かった。いつものようにドアノブをひねって、扉を開け、中に入る。
入った図書室には――――ひらひらと雪が降っていた。
「は……? なんだ、これ」
 レイは大きく目を見開いた。一面に白く染まった図書室だったが、よく見れば床や棚を覆っているのはシーツで、降っているのは紙吹雪だ。レイはその一枚を手のひらに受け止める。その途端、大きな声が響き渡った。
「レイ、ハッピーバースデー!!」
 図書室の二階部分から、大きな声とともに、兄弟達が一斉に紙吹雪をばらまいた。
 白い雪が舞い散り、黒髪の少年を包んだ。
 レイは頭上から降り注ぐ紙吹雪を見つめる。その向こうには、兄弟達の笑顔が輝いていた。
(そうか……誕生日、か)
 二階から下りてきて、エマとノーマンはレイに駆け寄る。
「すごいでしょ? ノーマンが考えてくれたんだよ!」
「みんなで切って、作ったんだ」
 ノーマンは手に取った紙吹雪を見せる。得意満面の二人を見返し、レイは口を開く。
「すごいけど……なんで雪?」
 サプライズの意図がわからないレイに、エマが目を丸くする。
「えー!? だってレイ、雪が降ったらいいなって言ってたんじゃないの?」
「そんなこと言ったか?」
 思い当たることがない、とレイは首をひねったが、記憶をたどって気がついた。
「……ああ、あれか」
 レイは先月に、何気なく呟いた言葉を思い出した。
 今年はまだ一度もハウスに雪が降っておらず、外で遊んでいた弟妹達が物足りない顔で空を見上げていたのだ。雪合戦がしたいと言い合うアリシアとドミニク、そり遊びがしたいと話すロッシーとクリスティ。そんな姿を見ていて、言ったのだ。
『雪が降ったらいいな』と。
 どうやらそれが、兄弟達の間を伝わっていくうちに、こうなったようだ。
「レイ、雪……嬉しくなかった?」
 そばにやってきたコニーが、心配そうに見上げて尋ねる。その顔にレイは前髪の奥で薄く笑う。
「いや、嬉しいよ。ありがとうな」
 その表情に、エマもノーマンも顔を見合わせて笑みを交わした。
「じゃ、あらためて! レイ、10歳のお誕生日おめでとう~!!」
 そう叫んで今一度、エマ達はすくい上げた紙吹雪で今日の主役を祝福した。

JUMP j BOOKS
『約束のネバーランド
~ノーマンからの手紙~』
発売中

ノーマンは決意の瞬間、何を想っていたのか――。
初小説版で暖かくも切ない「GFハウス編秘話」解禁!!

著者:原作/白井カイウ 作画/出水ぽすか 小説/七緒
判型:新書判
価格:定価:本体650円+税
発売日:絶賛発売中

JUMP j BOOKS
『約束のネバーランド
~ママたちの追想曲~』
発売中

エマたちの脱獄の前に立ち塞がった最大の壁、イザベラ、クローネ。
彼女たちの「“飼育監”へと至る知られざる過去」が解禁!!

著者:原作/白井カイウ 作画/出水ぽすか 小説/七緒
判型:新書判
価格:定価:本体680円+税
発売日:絶賛発売中

©白井カイウ・出水ぽすか・七緒/集英社

PAGE TOP